韓国のウェブトゥーンの歴史がよくわかる「ウェブトゥーン帝国の誕生」というTV番組が2月6日にKBS1で放送されましたので紹介したいと思います。

時は2001年。韓国の漫画家は、非常に絶望的な気持ちで漫画創作に取り組んでいました。なぜなら、スキャン本が横行していて、収益にならないからです。スキャン本をネットで流通する人たちが悪いというだけでなく、消費者も悪意がなくスキャン本を読んでいたからなおさら絶望的になるわけです。
そんな時に、韓国の漫画家たちはインターネットに活路を見出そうとします。当時韓国ではSNSの原型であるサイワールド「ミニホムピ」が人気を博しており、そこに様々な実験的な漫画がアップされました。ミニホムピというのは、自分の部屋を作り、互いに訪問し合って、自分と考えやイメージを文章や絵で表現して共感を生むことのできるSNSです。2001年の時点で、みんなが漫画をアップしてコメントを書いて共感・拡散できるサイバー空間が韓国にあったわけです。
『神と共に』で有名なジュ·ホミン氏は中学・高校の時、クラスで漫画を描いて楽しむ学生の一人でした。自分が描いた漫画がアップされたのを見て友達が笑ってくれて、そういう反応がすごく楽しかったと回想しています。まさか自分が漫画を描いてグローバルな人気を得るなんて思いもよらなかったとも言っています。なぜなら彼は「絵がすごく下手」だったからです。雑誌形式であれば、デビューのチャンスがなかったはずです。今では当たり前ですが、インターネットで下手な漫画を描いてアップして誰かが面白いと言うと、一気に広がって大人気になった。その一人がジュ·ホミン氏でした。
韓国で最も有名な作家のカンプル氏も同様です。彼はカンプルドットコムという自分のホームページを作って漫画をアップしました。それがメディアDAUMの目に留まって、映画コーナーのレビュー漫画を担当することになります。そして本格的にネット漫画を描いた最初の作品が『純情漫画』です。この2003年の作品が、縦スクロールで長編ストーリーを描いた「ウェブトゥーンの最初の作品」と言われています。

その後もヒット作を連発し、『あなたを愛しています』の最終回がアップした時、メディアDAUMのサービスチームはサーバを増強して準備していましたが、それでも足りない程のトラフィックになりました。2004年当時、韓国の数千万人の韓国人がこの作品をほぼ同時に読んだことになります。
ウェブトゥーンのブームはメディアDAUMに始まり、その後、NAVERウェブトゥーンが後発走者として挑戦を始めます。NAVERが成功したのは、一人の天才的なプロデューサーで、現代表であるキムジュンギュ氏の功績が大きいと言えます。彼は、まず、NAVERという自社メディアの特性と、DAUMとの差別化を考えた上で、韓国の中高生が誰でも共感できる分野に集中しチャレンジしていきました。キーワードは「ギャグ」でした。現実的な風刺や読者との共感できるギャグ素材と、トレンドを反映できる才能を持った作家を探しました。キムジュサム作家の『ジャングル高校』、ジョソク作家の『心の声』等が大人気となり、初期のNAVERウェブトゥーンの成功を導きました。

この後も映像は続きますが、現在ピッコマやLINEマンガの成功だけを見ても、恐らく何故韓国のウェブトゥーン作品が人気があって、なかなか日本独自のウェブトゥーンが人気が出ないのかはわからないと思います。端的に言えば、「危機感」と「年月」の深みが韓国にはあって日本にはない、ということだと思います。映画がテレビに、ファミコンがプレステに、TVゲームが携帯ゲームになる時、旧世代の成功者はなかなか新しい世界に入るのが遅れてしまいます。日本の漫画業界も同様の傾向があるかもしれません。
韓国は国が小さく海外志向が強いと言われますが、もう少し深堀りすれば、まず国内でテストし、成功したモデルを海外に最適化する手法に長けていると言えるのではないでしょうか。幸いにも、カンプル氏やキムジュング氏のような挑戦者が成功したように、日本にも新たな若き挑戦者が増えていますので期待したいです。