
日本の漫画家は、原稿料として1ページ単価で計算しますが、韓国のウェブトゥーンでは、1話が基準となります。かつてのウェブトゥーンでは1話50~60コマでしたが、今では平均が70〜80コマを超えるほどになっています。単純に労働量が増えて、過剰労働の温床となります。しかしこの状況は誰かが強制したわけではなく、もちろんNAVERやKakaoが強制したわけでもありません。端的に言えば、制作者がランキング競争から追い出されないようにするために起こった事態と見られます。現在の状況を放置すれば労働量はますます増え続けるでしょう。健全な産業発展のためには、作家を保護するための制度が待たれています。
ウェブトゥーン作家の健康問題は、先日、『俺だけレベルアップな件』の著者DUBUさんが亡くなったことでクローズアップされるようになりました。その1カ月後には『ロクサナ〜悪女がヒロインの兄を守る方法』の作家が過労で流産を経験したとSNSで告白し、『神の塔』の著者も7月から健康上の問題で無期限の休職を宣言しました。
2021年の「Webtoon作家調査」(OpenSurvey)によると、ウェブトゥーン作家は1日平均10.5時間、週平均61.95時間働き、作家の90%以上が週60〜70小間の作業をしているという結果が出ています。非常に厳しい労働環境が容易に想像できます。
NAVERやKakaoのような大手プラットフォームは、作家の健康のための制度を導入しています。作家が休載を希望した場合、NAVER Webtoonは可能な限り著者の希望するスケジュールに基づいて休載を取ることを決定します。NAVERもKakaoも作家の健康状態管理は最優先事項です。制作会社(コンテンツプロバイダ/CP)を通じて契約する作家は、CP側のサポートを受けます。
大手CPのContentLabBlueでは、チームが結成された後、仕事は週5日勤務40時間に準拠して制作され、有給の年次休暇を提供すると説明しています。しかし、こうした制度を作っただけでは、過酷な労働を根本的には止められません。むしろ、過度のランキング競争を止めるシステムを導入すべきですが簡単ではありません。
近年はチーム制作方式が主流なので、個人作家の作品がチーム制作作品とランキング上位を争うためには多くの労働時間を費やさなければなりません。上記調査によると、個人作家作品の割合は3年連続で減少し、アシスタントの利用率は3年連続で増加しています。ますます個人作家は苦境に追い込まれています。
有休制度の強化・義務化は最優先でしょう。作家自身が休暇を求めるとき、それはプラットフォームがそれを受け入れる程度ではなく、普通の労働者の有給と同様に義務化するしかありません。また、契約に記載されているコマ数上限を超える分には追加手当があるべきです。残業手当と同じ考え方ですね。
こうした様々な労務問題を抱える業界状況を鑑み、作家の権利を保証するウェブトゥーン独自の法律がまもなく韓国の国会に導入される動きもあります。
この法案では、まずウェブトゥーン作家の役割を分析しています。業界が進歩し、作品制作の分業化が進むにつれて、メイン作家に加えて、補助作家(アシスタント)が分離規定されます。また、分業化されたタスクでは、AIや3Dグラフィック等、ウェブトゥーン制作に必要な技術要員も同様に分離規定されます。
次に、創造的労働に対する報酬を計算するための基準も確立します。ウェブトゥーン業界の報酬は労働量ではなく、納品物単位で支払われています。しかし、この規定では1話当たりのコマ数の増加に対応できません。
ウェブトゥーン作家の健康を保護するために有給休暇の概念も導入される予定です。ウェブトゥーン作家がプラットフォーム及びCPと契約締結する際に、作成者を投資および生産リスクから保護する条項も含まれます。また、契約時の作家に対し、二次著作物の権利合意について十分に説明することを義務付けています。
こうした法案が制定されることは、作家の健康保護のための第一歩ですが、一方で必然的に総制作費が上がるリスクはプラットフォームやCPに課せられることにもなり、結局、ウェブトゥーン市場が安定的に成長することが前提でこそ成立する法案です。世界各国でウェブトゥーン作品が増加している中で、いかに読者を魅了する作品を出し続けられるかというクリエイティブ面の課題と両輪で考えていく必要があります。